みなさん、エアコンはどうやって選んでいますか? 多くの方はカタログに記載されている畳数、例えば冷房7~10畳、暖房6~8畳 などを目安に決めていると思います。 だけどちょっと待ってください。実はこの畳数表示、1964年に制定されてから一度も変わっていないのです。 建物の断熱性能はこの間に大きく向上しているにもかかわらず。
エアコンの冷やす(暖める)ことのできる力は冷房能力、暖房能力としてキロワット(kW)で表されますが、 同じ能力であっても、部屋の条件によって冷やす(暖める)ことのできる広さは異なります。 つまり、部屋の広さだけでなく、窓の大きさや向き、外壁の断熱性能などを考慮しないと スペック過剰で高いものを買ってしまったり、ひょっとすると逆に、 いつまでたっても部屋が冷えない(暖まらない)スペック不足の製品を選んでしまうかもしれないのです。
そこで本稿では、その部屋に本当に必要な冷房能力・暖房能力を見積もる方法をご紹介します。
計算にあたっては、空気調和・衛生工学会の冷暖房熱負荷簡易計算法※
を利用しています。ただし、結果を保証するものではありません。
※SHASE-S 112-2009「冷暖房熱負荷簡易計算法」
それでは、さっそく始めましょう!
まずは、能力計算にあたって下記の情報を確認してください。 数は多いですが、とくに専門的な項目はありません。
住まいの構造 | ①鉄筋コンクリート造(マンションなど)、②鉄骨造・木造(戸建てなど) |
住まいの地域 | ①北海道、②青森 秋田 岩手、③宮城 山形 福島 栃木 新潟 長野、④宮崎 鹿児島、⑤沖縄、 ⑥それ以外(東京など) |
外壁熱通過率(W/m2・K) | と言っても、すぐに分かる方はいないと思います。 省エネ基準から推定するので「竣工年」を確認してください。 |
フロアの位置 | ①最上階、②中間階 |
バルコニーの有無 | ①あり、②なし |
外壁の造り | ①一面外壁、②二面外壁 ※外気に接している面数。例えば、角部屋は二面外壁です |
窓の造り | ①一重ガラス窓、②二重ガラス窓 |
窓の大きさ | ①大(幅2.7m 床まで)、②中(幅1.8m 床まで)、③小(幅1.8m 腰高) |
窓の向き | ①東、②西、③南、④北 |
部屋の広さ | 畳数 ※1畳=1.65平方メートルとします |
冷房の設定温度 | ①一般的な設定(26℃)、②少し強めの設定(24℃) |
暖房の設定温度 | ①一般的な設定(20℃)、②少し強めの設定(22℃) |
最初に外皮断熱の性能を確認します。 図2.1をご覧ください。まず、窓の造り(一重か二重か)によって、上段もしくは下段の正方形を選びます。 つぎに、正方形の図形に引かれた4本の直線から、該当する直線を1本選択します。 4本の直線はそれぞれ、外壁の造り(一面か二面か)、窓の大きさ(大か小か、なお中は中間をとります) によって決まっています。 最後に、Ⅹ軸の外壁通過率※ の該当するポイントから垂直に上に伸ばし、 さきほど選択した直線と交わる点で外皮断熱を判定します。 外皮断熱の高、中、低はY軸に記されています。 ※外壁通過率は表2.1から推定できます。
外壁透過率は表2.1を参照してください。 省エネ基準によって外壁の断熱性能が定められているので、竣工年からその数値を推定します。 例えば、平成20年竣工で、当時の省エネ基準に準拠している建物の場合、表中「H11竣工」を選びます。
地域 | H25竣工 | H11竣工 | H4竣工 | H4以前 |
---|---|---|---|---|
①北海道 | 0.46 | 0.46 | 0.54 | 0.91 |
②青森… | 0.56 | 0.57 | 0.87 | 1.35 |
③宮城… | 0.75 | 0.76 | 1.09 | 1.61 |
④宮崎… | 0.87 | 0.87 | 1.57 | 2.94 |
⑤沖縄 | 1.24 | 1.24 | 2.87 | 2.94 |
⑥その他 | 0.87 | 0.87 | 1.42 | 1.79 |
外皮断熱の性能が判定できたら、表2.2、もしくは表2.3から最大熱負荷(W/m2)を選択します。 鉄筋コンクリート造(マンションなど)の場合は上の表2.2から、 鉄骨造・木造(戸建てなど)の場合は下の表2.3から選んでください。 この、最大熱負荷がまさに冷暖房に必要な能力となります。
窓主方位 | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
南 | 西 | 北 | 東 | |||||
最大熱負荷(W/m2) | ||||||||
冷 房 |
中 間 階 |
バルコニー なし |
窓 面 積 率 |
小 | 87 | 109 | 66 | 69 |
中 | 104 | 144 | 79 | 101 | ||||
バルコニー あり |
中 | 79 | 135 | 76 | 91 | |||
大 | 92 | 165 | 85 | 119 | ||||
最 上 階 |
バルコニー なし |
小 | 94 | 116 | 73 | 76 | ||
中 | 111 | 151 | 86 | 108 | ||||
バルコニー あり |
中 | 86 | 142 | 83 | 98 | |||
大 | 99 | 172 | 92 | 126 | ||||
暖 房 |
外皮断熱 高 | 中間階 | 136 | 142 | 144 | 139 | ||
最上階 | 142 | 148 | 150 | 145 | ||||
外皮断熱 中 | 中間階 | 155 | 161 | 163 | 158 | |||
最上階 | 161 | 167 | 169 | 164 | ||||
外皮断熱 低 | 中間階 | 174 | 180 | 182 | 177 | |||
最上階 | 180 | 186 | 188 | 183 |
外皮断熱 | 窓 | 上階 | 冷房 | 暖房 | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|
南 | 西 | 北 | 東 | ||||
高 | 小 | 屋根 | 106 | 159 | 101 | 106 | 153 |
部屋 | 88 | 133 | 84 | 88 | 133 | ||
大 | 屋根 | 133 | 199 | 126 | 133 | 170 | |
部屋 | 111 | 166 | 105 | 111 | 148 | ||
中 | 小 | 屋根 | 125 | 187 | 119 | 125 | 191 |
部屋 | 104 | 156 | 99 | 104 | 167 | ||
大 | 屋根 | 156 | 234 | 148 | 156 | 213 | |
部屋 | 130 | 195 | 124 | 130 | 185 | ||
低 | 小 | 屋根 | 175 | 262 | 166 | 175 | 268 |
部屋 | 146 | 218 | 138 | 146 | 233 | ||
大 | 屋根 | 218 | 328 | 207 | 218 | 298 | |
部屋 | 182 | 273 | 173 | 182 | 259 |
ここで、最後の計算をする前に補正しておきます。
①冷房を少し強め(24℃)に設定する場合、冷房の最大熱負荷を+24(W/m2)します。
②暖房を少し強め(22℃)に設定する場合、暖房の最大熱負荷を+19(W/m2)します。
③すばやく冷暖房する場合(予熱・予冷時間を30分。基準は60分)、①②に補正係数を掛けます。
「鉄筋コンクリート造」は1.13、「鉄骨造・木造」で1.33となります。
④さらに、それぞれの最大熱負荷に、表2.3の地域による補正係数を掛けます。
地域 | 暖房 | 冷蔵 |
---|---|---|
①北海道 | 0.49 | 1.49 |
②青森… | 0.77 | 1.30 |
③宮城… | 0.86 | 1.18 |
④宮崎… | 1.12 | 0.77 |
⑤沖縄 | 1.34 | 0.23 |
⑥その他 | 1.02 | 0.96 |
最大熱負荷は単位面積当たりの値なので、それに部屋の広さを掛けて完了です。
最大熱負荷(W/m2) × 部屋の広さ(畳) × 1.65(m2/畳) ÷ 1000 = 冷房能力・暖房能力(kW)
冷房能力・暖房能力の見積もりができたら、候補を検索してみましょう。
なお、Selectaの 「 Quickチョイス 」では、Q&A形式で上記の計算ができます。こちらも是非お試しください!
それでは皆さん。良いショッピングを。Good luck !!